転職したらハラスメント天国?職場の2大妖怪の生態と私の生存戦略

転職

「せめてグチを言える同僚がいれば…」そんな淡い期待は、ハラスメント天国ではあっさり砕かれます。周囲を見渡せば、上司の機嫌を伺う「タイコモチ」と、存在を消す「ワレカンセズ」という2大妖怪の姿が。理不尽な嵐をやり過ごすために彼らがたどり着いた、哀しくもシュールな生存戦略の正体とは?

「まともな同僚」という淡い幻想

ハラスメント上司より味わい深いもの

転職して数週間、理不尽な上司のワンマンショーにも、座席の冷房の風がキツくて辛いとか、どうでもいいことにも少しずつ慣れてきていました。
「同僚にひとりくらいは、愚痴を言い合える『普通の人』がいるはず…」
そんな淡い期待は、見事に粉々に打ち砕かれました。上司の理不尽ムーブだけでも胃に穴が開きそうなのに、周囲の同僚たちを観察すればするほど、上司とはまた違った方向性の「味わい深すぎる生態」がだんだん見えてきてしまったのです。

厚生労働省の調査などを見るまでもなく、職場のストレスの第1位はいつだって「人間関係」です。特に中途採用者は、いわば「完全アウェイ」に放り込まれたようなものです。
上司が暴風を巻き散らしている真横で、他の同僚たちはひっそりとPCに向き合っています。一見すると平和そうに見えますが…、みんなの目は死んでいて腐臭が漂っています。

生存戦略が生んだ2大妖怪

じっと目を凝らして観察しているうちに、私の中でひとつの確信が芽生えてきました。
この人たち、最初からこんなクセ強キャラクターだったわけではなく、「ハラスメント天国」を生き抜くために長い年月をかけて独自の「進化」を遂げた結果、すっかり妖怪になっちゃったんだ、と。
厳しい環境に適応しようとすると変な形に進化しちゃうものなのですね。

観察日記:2大妖怪の習性とルーツ

妖怪その1「タイコモチ」〜悲しきイエスマン〜

【生態】

上司の意味不明な雑談や、オフィスが凍りつくほどの「オヤジギャグ」に対して、誰よりも早く脅威のスピードで反応します。
「さすが上司さん、目の付け所が違いますね〜!」
「いやぁ、深い! 深すぎて底が見えません!」

上司の言うことは100倍正しく、自分の意見を脳内から完全に抹消して、上司の機嫌だけを全身でキャッチして生きている究極のイエスマンです。上司を持ち上げてその場をやり過ごすスキルにかけては、もはや人間国宝レベルです。

【なぜ妖怪化したのか(背景の考察)】

もちろん、彼も最初から「太鼓持ち」だったわけではないと思います。
入社したての頃は「それはちょっと違うのでは」と正論を吐いたり、自分の意見をしっかり持った真面目な若者だったはずなのです。

ですが、そのたびに上司の逆鱗に触れ、公開処刑のような激詰めを喰らい、メンタルをバチバチに砕かれてきたに違いありません。

「ここでは正論を言うと死ぬんだ」と悟った彼らは、自分の意思を持つことをやめました。長い年月をかけて「タイコモチ」になることで、自尊心をすり減らさずにやり過ごす術を編み出したのです。
「太鼓を叩いている間だけは安全地帯」。それはもう、トラウマが生んだ悲しき防衛本能と言っていいでしょう。

妖怪その2「ワレカンセズ」〜気配を消す透明人間〜

【生態】

業務の質問をしようと声をかけようものなら、こちらの口が動き出した瞬間にすまし顔でこう言い放ちます。
「私、わかりません」
「私、その件はちょっと関わってないんで」

相手が誰であれ、どんなに困っていそうであれ、自分のテリトリーに一歩でも足を踏み入れられそうになると、全力でバリアを張ります。目が合ったとして、目の前に透明な壁があるかのように、視線を華麗にスルーしていきます。

【なぜ妖怪化したのか(背景の考察)】

この「ワレカンセズ」のルーツをたどると、もしかしたら以前は「頼まれると断れないお人好し」だったのかもしれません。親切心で後輩を手伝ったら、いつの間にかそれが自分の仕事にされてしまったり、「良かれと思ってアドバイスしたら責任だけ押し付けられた」という、悲しい経験を何度も積んできた過去がありそうです。

ワレカンセズは、「無知」こそが最大の防具であり、「関わらないこと」こそが定時退社の唯一の方法だと悟ってしまったのでしょう。周囲で誰が怒鳴られていようが、台風が来ようが、彼らの世界には「自分と、自分の定時退社」しか存在しません。

激詰めタイムと、進化の真価

理不尽な激詰めと地蔵妖怪たち

そんな「妖怪観察」を楽しんでいたある日、ある出来事が発生しました。
上司の不機嫌レーダーが限界突破し、オフィス全体の気圧が一気に急降下します。上司の指示通りに作成した書類を提出すると「この資料って見づらいの分かるよね?自分の頭でちゃんと考えてる?」とネチネチチクチク、いつものスーパー理不尽コンボが始まりました。
「これは昨日上司に指示されたのですが…」と言ってみても、そんな自分に都合の悪い言葉には聞く耳も持ちません。

上司の理不尽理詰めタイムが始まると、職場内ではいたるところで「同調シカト・必殺気配消し」が発動します。タイコモチは、さっきまでの「さすがです!」の勢いはどこへやら、無表情でPCとにらめっこしています。ワレカンセズに至っては、もはや生きているのかすら怪しいほど息をひそめて存在感を消しています。

防波堤の陰で見えた「悲しき生態系」

「この人たちも昔は上司の激詰めを正面から食らって絶望したんだな」
理不尽なネチネチ攻撃に耐えながら、私の脳内では冷静な分析が進んでいました。


激詰めの恐怖から我が身を守るために、彼らは「タイコモチ」と「ワレカンセズ」として進化していったんでしょう。そして、「新入り防波堤」がいるからこそ、あの2匹は安心して息をひそめていられるのだ、と気づいてしまいました。もし私が転職してこなかったら、今ごろ激詰めの矛先はあの2匹のどちらかに向かっていたかもしれないのです。

「都合のいい盾にされてる」という事実気づいてしまうと、ここで頑張るのもあほらしいという気持ちになってくるのでした。

静かな覚醒と、軽やかな第一歩

魔法が解けたあとのシュールな日常

上司が自席に戻って嵐が去った瞬間、オフィスには平穏が戻ります。
「災難でしたね。あんなの気にしなくていいですよ!」
満面の笑みで話しかけてくるタイコモチ。さっきまで地蔵のように固まっていた妖怪とは思えない切り替えの早さです。

そして、その横を「お先に失礼します」と、風のように爽やかに退勤していくワレカンセズ。
一人残された私は、散らかったデスクの上を片付けながら、ポツリと呟きました。
「もう辞めてもいいんじゃないかな」

進化の行き先はここじゃない

この職場で生き残るには、私もタイコモチかワレカンセズに進化するしかなさそうですが、自分の良心が全力で拒否します。

仮に進化をマスターしたとして、自分の人生に何の意味があるのでしょうか。上司の機嫌を取るために自分のプライドを売り渡すとか、人間をやめて空気になるとか、そんな方向性に自分の能力を使うのはあまりにももったいないです。私のキャリアは、このハラスメント天国で妖怪の仲間入りをするためにあるわけじゃないのですから。

帰りの電車の中で、お気に入りに入れたままになっていた転職支援サイトのアプリを立ち上げました。
「よし、登録情報の入力を進めよう」
ハラスメント天国と袂を分かつ決心をした瞬間でした。

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