「フリーランスになったけど、確定申告って何から始めればいいの?」
「いくら稼いだら税金を払う義務があるの?」
そんな税金に関する不安や疑問を抱えていませんか?
確定申告は複雑そうに見えますが、正しい知識と手順さえ知れば、誰でも一人で完結できます。
この記事では、あなたが申告の義務があるかどうかを判断する具体的な基準から、最大の節税効果を生む青色申告のメリット、そして帳簿作成から提出までの具体的な「4ステップの流れ」までを徹底解説します。
最新の税制情報も踏まえ、クラウド会計ソフトを使った効率的な方法を紹介しますので、この記事を読み終える頃には、あなたも自信を持って確定申告の準備に取り掛かれるでしょう。
納めすぎた税金を取り戻し、税金の不安から解放されるための一歩を、ここから踏み出しましょう。
はじめに:フリーランスの確定申告、自分でやるべき?

確定申告を一人で完結できる行動へ
フリーランスにとって、「確定申告」は避けて通れない最大のテーマです。
税金や経理に苦手意識を持つ方も多いと思いますが、ご安心ください。
この記事の目標は、読者であるあなたが確定申告の「全体像」をしっかりと理解し、納税や還付の手続きを自分一人で完結できる状態になるまで具体的な行動を促すことです。
確定申告はフリーランスの義務であるだけでなく、正しく行うことで節税メリットを最大限に享受できる大切な手続きです。
申告ソフトの選び方から提出方法まで、この先に具体的な手順を紹介しますので、一緒に苦手意識を乗り越えましょう。
確定申告の基本「いつからいつまで?」(最新の申告期間)
所得税の確定申告期間は、原則として翌年の2月16日から3月15日までと定められています。
2025年(令和7年)分の申告期間は、2026年2月16日(月)から3月16日(月)までとなります(3月15日が土日の場合、翌月曜日が期限になる)
ただし、納めすぎた税金を取り戻す「還付申告」については、翌年1月1日から5年間、いつでも申告が可能です。
還付申告の場合は、期限を気にせず焦らず手続きを始められます。
【判断基準】確定申告「必要」「不要」「したほうがいい」3つのケース

確定申告が「必要(義務)」なフリーランスの基準
フリーランスの場合、あなたの事業所得(売上から経費を引いた利益)が基礎控除額(48万~95万円)を超える場合、原則として所得税の確定申告が必要です(義務)
これは、所得税の計算において「基礎控除」として誰でも控除を受けられるためです。
所得がこの基礎控除額を超えた場合、その超えた部分に課税所得が発生するため、確定申告を行う義務が生じます。
所得の計算は、「収入金額(売上)-必要経費-各種控除(基礎控除など)」という計算式で行われます。
基礎控除額超えが目安:具体的な計算方法を解説
確定申告の必要性を判断する際、「所得」は「売上(報酬)」とは異なる点に注意が必要です。
所得は「売上から経費を引いた金額」で計算されます。
つまり、経費をきちんと計上することで所得を基礎控除額以下に抑えられれば、所得税の確定申告の義務はなくなります。
例えば、年間の売上が100万円でも、仕事に必要な経費が53万円かかっていれば、所得は47万円(100万円-53万円)となり、基礎控除額以下のため所得税の申告義務は生じません。
(ただし、住民税の申告は別途必要です)
「月10万円の売上」だと税金はいくらになる?(所得シミュレーション)
では、毎月10万円、年間で120万円の売上がある場合、税金はいくらになるでしょうか。
この場合でも、最終的な所得税の納税額は経費次第で大きく変わります。
基礎控除があるため、所得(120万円-経費)が基礎控除額以下なら所得税はかかりません。
仮に経費が0円、基礎控除が95万円だった場合でシミュレーションすると、所得は120万円、課税所得は25万円(120万円-基礎控除95万円)となります。
この25万円に対して所得税率5%が適用され、所得税は年額約12,500円が発生します。
また、所得税とは別に住民税も発生します。
確定申告が「不要」なフリーランスの基準
前述の通り、事業所得が基礎控除額以下であれば、原則として所得税の確定申告は不要となります。
これは、課税対象となる所得が発生しないためです。
ただし、ここで一点注意が必要です。
所得税の確定申告が不要でも、住民税の申告は地方自治体への届出として別途必要になるケースがあります。
逆に、所得税の確定申告を行った場合は、その情報が税務署から自動的に自治体に連携されるため、住民税の申告は原則不要となり、二重の手間を省けます。
確定申告を「したほうがいい(還付申告)」フリーランスの基準
確定申告の義務がないフリーランスでも、申告をすることで納めすぎた税金が戻ってくる(還付)などのメリットがあるため、積極的な申告をおすすめします。
これを還付申告と呼びます。
次のようなケースでは、還付申告をしないと納めすぎた税金が手元に戻らず、損をしてしまう場合があります。
事業が赤字の場合
青色申告を選択しているフリーランスの場合、事業が赤字になった年も確定申告(損失申告)を行うべきです。
青色申告には、事業で生じた赤字(純損失)を翌年以降最長3年間にわたって繰り越せる「純損失の繰越控除」の特典があります。
将来事業が黒字になった際に、この繰り越した赤字と相殺できるため、将来の納税額を大幅に減らすことができます。
源泉徴収されている報酬がある場合
クライアントから源泉徴収された報酬を受け取っているフリーランスは、確定申告で税金が還付される可能性が非常に高いです。
源泉徴収額は、あなたが支払うべき経費や各種控除を考慮せず、報酬から概算で差し引かれています。
そのため、確定申告でそれらを精算することで、納め過ぎた税金が還付されるケースが多いのです。
ライティングやデザインなど、業務委託による報酬は源泉徴収の対象となることが多いので、必ず確定申告で精算しましょう。
医療費控除、ふるさと納税、住宅ローン控除を利用する場合
これらの控除を受けるためには、確定申告(還付申告)の手続きが必要です。
会社員の場合は年末調整で完了できる控除もありますが、医療費控除や住宅ローン控除の初年度など、確定申告が必須となる手続きもあるためです。
例えば、年間10万円超(所得200万円未満は所得の5%超)の医療費を支払った場合の「医療費控除」や、「ふるさと納税」でワンストップ特例を使わない場合などは、申告で控除を適用できます。
【最大の節税メリット】フリーランスなら「青色申告」を選ぶべき理由

青色申告と白色申告の大きな違い
所得税の申告には、青色申告と白色申告の2種類があります。
青色申告は、税制上の優遇措置(節税メリット)が非常に大きい反面、複式簿記という少し複雑な方法で記帳することが原則必要です。
一方、白色申告は帳簿付けが簡易(簡易帳簿)で済むという手軽さがありますが、節税メリットは青色申告に比べて大幅に少ないという違いがあります。
青色申告の3大メリット
青色申告を選ぶべき最大の理由は、白色申告にはない以下の3つの大きな節税特典があるためです。
これらの特典は、事業を営む個人事業主の負担を軽減するために設けられた制度です。
青色申告特別控除で最大65万円控除
青色申告の最も大きなメリットは、一定の要件を満たすことで所得から最大65万円または55万円、または10万円が控除されることです。
この所得控除によって課税所得が大幅に減り、結果として所得税や住民税を大きく節税できます。
特にクラウド会計ソフトを利用したe-Tax申告(65万円控除)は、最も節税効果が高くおすすめです。
65万円控除の要件は、複式簿記による記帳と、e-Taxによる電子申告または電子帳簿保存を行うこと、そして期限内の申告です。
3年間の赤字繰り越しが可能
事業で赤字(純損失)が出た場合、その損失を翌年以降3年間にわたって繰り越せる「純損失の繰越控除」を利用できます。
この制度により、もし1年目に赤字100万円が出たとしても、翌年以降の黒字所得と相殺できるため、将来の納税額を減らすことができます。白色申告にはこの制度はありません。
家族への給与を経費にできる(青色事業専従者給与)
青色申告では、事前に「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出し、一定の要件を満たせば、生計を一にする配偶者や親族に支払った給与を経費(専従者給与)にできます。
白色申告では経費にできる金額に制限がある(最大86万円まで)のに対し、青色申告では適正な金額であれば全額を経費にできるため、高い節税効果を得られます。
青色申告に必要な事前手続き
青色申告の特典を受けるためには、税務署への事前届出が必須です。
期限内に届出を提出しないと、その年の青色申告は認められません。
具体的には、以下の2つの書類を、定められた期限内に提出する必要があります。
開業届(個人事業の開業・廃業届出書)
事業を開始してから1ヶ月以内に、税務署へ提出する義務がある書類です。
法律(所得税法)で提出が定められた義務であり、この開業届が青色申告の前提となる書類でもあります。
提出しなくても罰則はありませんが、実務上は青色申告承認申請書と一緒に提出することがほとんどです。
青色申告承認申請書
青色申告を行いたい年の3月15日までに、または開業日から2ヶ月以内に税務署へ提出する書類です。
この申請書を提出しなければ、青色申告の特典(65万円控除など)は受けられません。
提出期限を過ぎると、その年は白色申告となり、青色申告は翌年からとなりますので注意が必要です。
【ステップ解説】フリーランスの確定申告の具体的な「流れとやり方」

確定申告は、難しそうに見えても手順さえ理解すればシンプルです。
具体的には、「帳簿作成と書類準備」→「申告書作成」→「提出」→「納税/還付」の4つのステップで進められます。
1年間(1/1〜12/31)の取引を整理し、翌年の申告期間内(原則2/16〜3/15)に手続きを完了させる流れとなります。
STEP1:帳簿作成と必要書類の準備(1/1〜12/31)
帳簿作成
まずは1年間の取引を振り返り、売上と経費の証拠となる領収書や請求書などを整理します。
その後、会計ソフトなどを利用して帳簿にまとめます。
帳簿は、所得を計算するための根拠となる書類であり、税務署に提出する決算書の作成に不可欠なためです。
銀行口座の通帳、クレジットカードの利用明細、保険料の控除証明書などもこの段階で集めておきましょう。
自宅兼事務所の場合は、家賃や光熱費を経費にするための家事按分が必要です。
事業で使用する面積の割合や、使用時間など、按分の根拠となる情報も整理してください。
収支内訳書(白色)または青色申告決算書(青色)
帳簿の整理が終わったら、それを元に決算書を作成します。
白色申告者は収支内訳書を、青色申告者は青色申告決算書を作成し、確定申告書に添付して提出することが義務付けられています。
青色申告で65万円控除を受けるには、貸借対照表と損益計算書の作成が必要です。
控除証明書類と源泉徴収票
生命保険料や国民年金など、所得控除を受けるための各種控除証明書も準備します。
これらの証明書を元に控除額を計算し、確定申告書に記載・添付することで控除が適用されます。
会社員時代の給与所得がある場合は源泉徴収票、源泉徴収された報酬がある場合は支払調書も必要です。
STEP2:確定申告書と各種書類の作成
STEP1で算出した所得を元に、所得税の確定申告書を作成します。
この申告書は、所得や税額、控除額などを記載する最終的な書類です。
e-Tax、国税庁の確定申告書等作成コーナー、または会計ソフトを利用して作成するのが一般的で、特に会計ソフトを使えば質問に答えるだけで簡単に作成できます。
STEP3:税務署への提出(オンライン・郵送・持参)
作成した申告書と添付書類は、必ず申告期間内(原則3月15日まで)に税務署へ提出します。
期限を過ぎると期限後申告となり、ペナルティの対象となる可能性があるためです。
提出方法としては、e-Tax(電子申告)が推奨されています。
e-Taxは、青色申告で最大の65万円控除を受けるための必須要件になっているほか、自宅から24時間提出できる利便性も高いです。
STEP4:納税または還付金の受け取り
申告書作成で算出した納税額がある場合は、申告期限(原則3月15日)までに納付します。
納付が遅れると延滞税が課されますので、期限厳守です。
還付金がある場合は、申告から1〜2ヶ月後に指定した口座に振り込まれます。
納付方法には、e-Tax、振替納税(納付期限が延長される)、コンビニ納付、クレジットカード納付などがあります。
【効率化】確定申告を簡単に終わらせるクラウド会計ソフト3選

確定申告ソフトを使うメリットと選ぶポイント
会計ソフトを利用することで、記帳の手間を大幅に削減し、ミスなく申告書を作成できます。
最大のメリットは、銀行口座やクレジットカードとの連携機能です。
これにより、取引を自動で取り込めるため、手入力の手間がほとんどなくなり、大幅な時間短縮と正確性の向上が期待できます。
ソフトを選ぶポイントは、e-Taxに対応しているか、青色申告の複式簿記に対応しているか、サポート体制は充実しているか、そして費用が予算に合っているか、という点です。
おすすめクラウド会計ソフトの比較
現在、freee、マネーフォワード、弥生といったクラウド型ソフトが主流です。
クラウド型は法改正への対応が自動で行われるほか、スマートフォンからでも利用できる利便性が高いためおすすめです。
freee会計
freee会計は、初心者にとって最も使いやすく、簿記の知識がなくても〇×形式の質問に答えるだけで申告書作成が可能なソフトです。
独自のUI/UXで設計されており、会計の専門用語を極力使わずに操作できるのが強みです。
銀行やクレジットカードとの自動連携機能も強力です。
マネーフォワード クラウド確定申告
マネーフォワード クラウド確定申告は、従来の会計知識がある人や、より詳細な財務分析を行いたい人にとって使いやすい設計です。
家計簿ソフト「マネーフォワード ME」との連携も容易で、公私の区別がしやすいというメリットもあります。
経理・財務分析の機能が充実しています。
やよいの青色申告 オンライン/やよいの白色申告 オンライン
やよいのソフトは導入実績が多く、安心感がある老舗ソフトです。
クラウド型の中では価格が比較的安価な点も魅力です。
コストパフォーマンスが高く、サービス提供歴が長いためサポート情報も豊富です。
最大2年間無料など、導入しやすいプランがあるのも特徴です。
確定申告をしないとどうなる?よくある疑問と対処法

無申告のペナルティ(無申告加算税・延滞税)
確定申告を期限内に行わなかった場合、「無申告加算税」と「延滞税」という2種類のペナルティが課されます。無申告加算税は申告をしなかったことに対する罰金で、延滞税は納付が遅れたことに対する利息です。
無申告加算税は原則として納付すべき税額の5%ですが、税務署からの指摘後に申告した場合はさらに高くなることもあります。
悪質な場合は重加算税(40%)が課されます。
確定申告の期限に間に合わなかったら?
もし確定申告の期限に間に合わなかった場合は、気づいた時点ですぐに「期限後申告」を行うべきです。
自主的に申告を行うことで、無申告加算税の税率が軽減されるなど、ペナルティが軽くなります。
一定の条件(法定納期限から1ヶ月以内の申告など)を満たせば、無申告加算税が課されない特例もあります。
開業届なしでフリーランスとして働けるか?
開業届を出さなくても、フリーランスとして働くこと自体は可能であり、開業届を出さなかったことに対する罰則(ペナルティ)もありません。
しかし、所得税法上では開業届の提出が義務付けられていますので、提出しておくのが無難です。
また、屋号付きの事業用口座が作れない、補助金や助成金の申請に不利になるなどのデメリットもあるようです。
所得税のほかに「消費税」の申告も必要?(インボイス制度関連)
所得税の確定申告とは別に、消費税の申告が必要になるフリーランスもいます。
原則として、2年前(前々年)の課税売上高が1,000万円を超える場合は消費税の申告・納税義務が発生します。
また、インボイス制度(2023年10月開始)に伴い、売上が1,000万円以下でもインボイス登録をして課税事業者になったフリーランスも増えており、この場合も消費税の申告が必要です。
課税事業者になった場合、消費税の計算方法(簡易課税制度の選択や「2割特例」※期間限定の軽減措置)も検討する必要があります。
まとめ:確定申告は難しくない!
この記事では、フリーランスの確定申告の「全体像」から具体的な手続きまでを解説しました。
ここで重要なポイントを改めて振り返ります。
【この記事で押さえるべき重要ポイント】
- 申告義務の基準:事業所得が基礎控除額を超えたら確定申告が原則必要。
- 最大の節税対策:青色申告を選択し、e-Taxで申告すれば最大65万円の特別控除を受けられる。
- 全体の流れ:「帳簿整理」→「申告書作成」→「提出」→「納税/還付」の4ステップで進められる。
- 効率化の鍵:クラウド会計ソフト(freee、マネーフォワードなど)を活用すれば、簿記知識がなくても簡単に複式簿記での記帳が可能。
- 必須の事前準備:青色申告をしたいなら「開業届」と「青色申告承認申請書」の提出が必須。
「難しそう」という苦手意識は、知識不足から生まれるものです。
しかし、この記事で全体像を理解したあなたは、もう税金の不安に怯える必要はありません。
確定申告は、面倒な義務ではなく、「納めすぎた税金を取り戻し、将来の事業の土台を固めるためのチャンス」です。
税金のメリットを最大限に享受するために、いますぐ行動を始めてみませんか。

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